米食品医薬品局(FDA)は2018年11月15日、全米でメンソールたばこの販売を禁止する方針を表明しました。それを受けて、これまで、下落を続けていた【BTI】の株価が、さらに大幅安となっています。
あくまでも、方針の発表ですので、今現在は、全米でのメンソールたばこ規制は、されていない状況です。
今回のBTIの株価の下落は、方針の発表に反応した株価先取りの反応といえるでしょう。
詳しく調べてみると、これまで、メンソールたばこは、十数の地方自治体が禁止しているのですが、連邦規制は敷かれていないという状況でした。
それが全米での禁止方針の発表ですから株価が反応するのは当然のことと言えるでしょう。
これにより、BTIの株価は、52週高値71.44$に対して、現在の株価は34.59$、高値から51.6%も下落している状態です。
今回の下落により、配当利回りは7.73%まで上昇、ここまでの高配当となると減配リスクについてもしっかり考えたいところですし、購入のチャンスにもなります。
メンソールたばこは、若年層やアフリカ系米国人に人気があり、米国の年間たばこ販売数量の3分の1程度を占めます。
大きく下がった【BTI】の株価と、今後の業績への影響について考えていきたいと思います。
メンソール販売禁止の【BTI】株価への影響
過去1年のBTIのチャートが示す通り、2018年のBTIの株価は、右肩下がりです。今回のFDAのメンソール禁止方針の発表がダメ押しの下落になったという状況です。
メンソール禁止方針の発表の影響と考えられる下落としては、45.16$から現在の株価34.59$まで下落し、今現在、23.4%下落していることになります。
発表の1週間ほど前から、下落が始まっているのが気になりますが、発表情報を先に入手できた勢力がいると考えておいていいでしょう。
【BTI】は年初から下落していますが、「ずっと下落しているけど、なぜ?」という疑問を持っている方も多いと思います。
これは、世界的たばこ離れによるものなのでしょうか?
この仮説が正しいとすれば、たばこ業界全体の株価もが右肩下がりということになると思います。
では、BTIと、PMと、MOの2018年の株価を比較してみましょう。
BTIとPMとMOの2018年株価チャート比較
BTIとMOとPMの過去1年の株価の変動率を比較したチャートです。基準はグラフの左端を0%とし、上下した割合で比較していいます。
4月中旬PMのアイコスの日本での販売が想定を下回っていたことから大幅な下落となりましたが、その後、PMとMOは、徐々に株価が戻ってきていました。
注目は、BTIが異なる動きを見せ始めた8月中旬ごろからの値動きです。
MOとPMは株価が上昇しているにもかかわらずBTIはそのまま下落しています。
BTIが異なる動きで下落していった理由の1つとして考えられるのは、
8月3日に、【PM】フィリップ・モリスのスイス法人が、グローによるアイコスの特許侵害を理由として【BTI】ブリティッシュ・アメリカン・タバコに対して以下の請求を求めた訴訟を東京地方裁判所に起こしていることです。
その訴訟内容は、過激で、グローの販売差し止め、1億円の損害賠償請求です。1億円の損害賠償は大した話ではないですが、これから売り上げを伸ばそうとしている電子タバコの販売差し止めは多大なる影響があると考えられます。
そしてこれが米国での訴訟となれば大きな経営リスクになるでしょう。それを見込んでの株価下落と考えます。
以上のような理由もあり、BTIは、PMとMOにと比較して、過去一年の株価下落幅が大きくなっていると考えられます。特許侵害の訴訟リスクはBTIだけの悪材料です。
BTIは50%前後、PMとMOは20%前後の下落です。年初は同じぐらいの株価変動割合だったことを考えると30%もの差があることは大きいです。
BTIの下落理由に関しては、世界的なたばこ離れの影響だけではなさそうです。
BTIとPMとMOの配当利回り比較
ここで、今現在2018年11月23日の終値基準で、税引前の配当利回りの比較をしておきます。データ元は、dividend.comです。
ティカー | 配当利回り | 配当性向 | 連続増配年 |
BTI | 7.73% | 70.8% | - |
PM | 5.41% | 91.2% | 10 |
MO | 5.90% | 80.0% | 9 |
BTIの配当利回りが7.73%と、相当魅力的な値にまで上昇してきています。PMとMOに関しても長期投資家目線では十分な配当利回りです。
BTIとPMとMOそれぞれの米国売上割合
冒頭、「メンソールたばこは、米国の年間たばこ販売数量の3分の1程度を占めます。」と言いました、【BTI】の株価が下がった理由が、他社PM、とMOに対して米国での販売額が大きければ納得できます。
果たしてそうでしょうか?見て行きましょう。
BTIは、過去に行ったレイノルズアメリカンの買収により、アメリカたばこ市場に進出したという経緯があります。アメリカンでの販売額は【MO】アルトリア・グループに次ぐ第2位です。
MOは、PMがアメリカ販売部門を分社した会社で、MOの売り上げのほぼ100%がアメリカ市場での販売と言うことになります。
PMは0%ですので、今回の米国FDAのメンソールたタバコ禁止方針の発表については全く影響は無いと言え、それが株価横ばいという結果にも表れています。
一方、MOは売り上げのほぼ100%がアメリカでの販売ということで、BTIと比較して、株価がもっと下落していもいいのでは?と思いますが、下落割合はBTIと変わっていません。注目すべき点です。
BTIの米国での売り上げ割合に話を戻しますが、BTIの総売り上げに占める米国での販売割合が45%ほどで、その半分がメンソールたばこの売り上げということです。
BTIの全世界売上高の25%程が米国のメンソールたばこの売り上げ高となります。
まとめると
BTIは全世界の売上高の25%ほどが米国メンソールたばこの売上高
MOは売上高の100%が米国でメンソールたばこの割合は不明
PMは米国でのたばこ販売は無し
となります。
【BTI】ブリティッシュアメリカンタバコの売上と利益推移
【BTI】ブリティッシュアメリカンタバコの売上高はここ10年は、さほど伸びておらず2014年、15年は減少しています。
2017年1月17日497億$でレイノルズアメリカンを買収した効果で、2017年の売り上げは、大きく伸びていますが、この買収で今回のメンソール禁止方針発表の影響を受けていると言えます。
この5兆円以上の巨額な買収をしたのに、その市場を狭められるとうリスクから株価が下がるのは分かります。お金をかけてキャッシュ創出できる市場にでていって、その市場が狭められるかもしれない状況ですから。
【BTI】ブリティッシュアメリカンタバコのキャッシュフロー
投資CFが低く、営業CF、フリーCFの漸増しています。2017年は投資CFが多くなっていますが、これは電子たばことレイノルズアメリカン買収関係の投資が増えているようです。
タバコ業界の今後は、電子タバコの、販売競争となっていきます。
今のところ、日本では、先行者利益を得ている【PM】フィリップモリスの「アイコス」がシェアトップで、JTの「プルームテック」、【BTI】ブリティッシュアメリカンの「グロー」と続きます。
まとめ
実は、今回のようにメンソールたばこ禁止方針の関連情報が発表がされたのは初めてではありません。
2014年に、FDAがメンソールたばこの禁止を検討していました。「メンソールたばこは清涼感があり、特に若年層の喫煙を促していることが」懸念されているとのことでした。
では、今回2018年11月15日の「メンソールたばこ禁止」が本当に実行されるのか?とうことになりますが、米国のアナリストたちが「影響はほとんどない、少ない」と説明している情報がありましたので紹介します。
■アナリストBonnie Herzog氏はメンソール規制報道で下落中のBTIを買い推奨。更に、メンソールたばこが非メンソールタバコより害があるとの科学的根拠は乏しいとの見方。
■Height Capital Marketsのアナリストは実質的な規制にはならないだろうとの見方。仮に規制が2022年までに実施されたとしても、たばこ会社はその進捗を遅らせるべく訴訟に踏み切るだろう。
私もこの考えには同感ですし、例え規制されたとしても、BTIの総売り上げのメンソールたばこ分のすべてである、25%の売り上げがゼロになるわけではなく、数%が他社に流れて、残りは、メンソール以外のたばこを購入するようになると考えています。
喫煙者は、たばこの販売を禁止されたからと言って、たばこをやめるのは難しいはずです。メンソールたばこが例え禁止になったからって、たばこを吸うのをやめられるえしょうか?
そして現在のBTIの株価は、過去1年の高値から51.6%も下落している状態で配当利回り7.73%です。個人的には下落しすぎていると思っています。
落ちるナイフは拾いたくないですが、【BTI】を今まで持っていない方や、買い増しを狙う投資家にはチャンスと言えるかもしれません。
少額で分割購入することでリスク分散しながら買い集めるという古典的な方法が力を発揮しそうです。
Good Luck!
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